電子帳簿保存法の改正-PDF請求書の紙保存がNGに?

改正電子帳簿保存法が施行される2022年1月まで1か月余りとなりました。

弊所も例に漏れず、経理体制の見直しなどの対応を済ませています。

今回の電子帳簿保存法の改正は、全体としてはペーパーレスを法律面から後押しすることを狙った内容となっているものの、要件が緩和される一方で罰則が強化されていたり、これまでは「紙で保存しておけば大丈夫」だったことが認められなくなったりと、重要な法改正となっています。

弊所では、紙での発行を希望されるクライアントを除いて請求書等をPDFで発行していますが、電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】の問42で以下の説明がされていることから、「紙で保存しておけば大丈夫」は来年以降は通用しなくなってしまいます。

令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、その電磁的記録を出力した書面等による保存をもって、当該電磁的記録の保存に代えることはできません。したがって、災害等による事情がなく、その電磁的記録が保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】

請求書等がPDFでやりとりされた場合、受け取った側も発行した側も電子帳簿保存法に従って電子データで保存しなければならなくなるので、請求書等のPDFについて、「電子取引の保存要件(真実性・可視性の要件)」を踏まえて経理体制を見直しました。

なお、この点については、国税庁が2021年11月12日に「お問い合わせの多い質問への補足」として以下の説明を公開しました。

補4 一問一答【電子取引関係】問 42
【補足説明】
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務に関する今般の改正を契機として、電子データの一部を保存せずに書面を保存していた場合には、その事実をもって青色申告の承認が取り消され、税務調査においても経費として認められないことになるのではないかとの問合せがあります。
これらの取扱いについては、従来と同様に、例えば、その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません。

お問合せの多いご質問(令和3年 11 月)

上記の説明から、電子帳簿保存法が定める保存要件に従って保存されていないとしても、これをもって罰則が即適用されるようになるわけではないことが分かりました。

しかし、電子化の促進はテレワーク環境の整備・強化にも直結しますので、今回の改正電子帳簿保存法の施行に合わせて見直しを行った次第です。

なお、紙で発行したり受け取ったりした請求書等をスキャンして保存する処理(国税庁が言うところの「スキャナ保存」)については、弊所が契約しているクラウド会計の改正法対応ストレージサービスを使用する体制を整えました。

全ての事業者に大きな影響が生じるにもかかわらず十分に周知がなされているとは言い難い今回の電子帳簿保存法の大幅な改正ですが、法令遵守のもと適切な経理体制の構築・強化を進めて参ります。

Comments are closed.