日・中・台の不使用取消審判(制度・実務の比較)

日本の商標制度では、登録商標が継続して3年以上使用されていない場合にその登録の取り消しを図ることができる審判が用意されています(商標法50条)。

この審判は「不使用取消審判」というもので、日本に限らず多くの国に存在します。

今回は、中国と台湾の不使用取消審判の制度・実務について簡単にご紹介した上で、日本の不使用取消審判と比較してみます。

【主体的・客体的要件】

(1)中国
誰でも不使用取消審判を請求することができます。
不使用取消審判の請求の対象となる登録商標は、正当な理由がなく継続して3年以上使用されていないものです。
ここで、商標権者だけでなく、商標権者から使用権を与えられた者による使用も、登録商標の使用に該当します(原簿に登録された使用権者である必要はありませんが、登録された使用権者であれば、登録商標の使用と認められる可能性が高まります)。
不使用取消審判は、一部の指定商品・指定役務を狙い撃ちして請求することができます。

(2)台湾
誰でも不使用取消審判を請求することができます。
不使用取消審判の請求の対象となる登録商標は、正当な理由がなく継続して3年以上使用されていないものです。
ここで、商標権者だけでなく、商標権者から使用権を与えられた者による使用も、登録商標の使用に該当します。
不使用取消審判は、一部の指定商品・指定役務を狙い撃ちして請求することができます。

【不使用の事実を証明する証拠の提出】

(1)中国
不使用取消審判を請求する際、不使用の事実を証明する証拠を提出する必要はありません。

(2)台湾
不使用取消審判を請求する際、不使用の事実を証明する証拠(登録商標の使用に関する調査結果の報告書)を提出する必要があります。

【駆け込み使用に関する規定】

(1)中国
駆け込み使用に関する規定はありません。
商標権者に交渉を行うような場合は、先に不使用取消審判を請求するのが原則と言えます。

(2)台湾
不使用取消審判の請求前3か月から請求の登録日までの間にされた登録商標の使用について、その使用が不使用取消審判が請求されることを知った後である場合は、駆け込み使用に該当するとして、登録商標の使用とは認められません。

【審理の方式】

(1)中国
不使用取消審判を請求した後は、特許庁⇔商標権者との間でやりとりがなされ、商標権者から提出された答弁書や証拠に基づいて特許庁がそのまま決定を出します。
不使用取消審判を請求した者は審理に関与できず、商標権者が提出した答弁書・証拠を見る機会やそれらに対して意見を述べる機会も与えられません。

(2)台湾
不使用取消審判を請求した後は、当事者対立構造のもと、答弁書・弁駁書といった書類や各種の証拠を双方が提出しながら審理が進みます。

【先行商標に対して不使用取消審判を請求する場合のポイント】

(1)中国
中国には拒絶理由通知書という概念がなく、類似する先行商標が存在すると判断された場合はダイレクトに拒絶査定がなされます。
つまり、先行商標に対して不使用取消審判を請求するタイミングは、自身の出願について拒絶査定がなされた後というケースが一般的です。
ここで、自身の出願については拒絶査定不服審判(復審)を請求する流れになるわけですが、この拒絶査定不服審判は、不使用取消審判の結果が出るまで審決を待ってもらうことができません。
そのため、不使用取消審判の結果が出る前に拒絶査定不服審判(復審)が終わってしまう可能性を踏まえて、不使用取消審判を請求しつつ改めて出願を行っておくのがセオリーとなっています。

(2)台湾
類似する先行商標の存在を指摘する拒絶理由通知書が発せられ、これを踏まえて先行商標に対して不使用取消審判を請求した場合、不使用取消審判の結果が出るまで審査を待つよう求めることで、通常、審査官は審査を一時中断します。
類似する先行商標の存在の指摘を受けていない指定商品・指定指摘がある場合は、指摘を受けている指定商品・指定役務と、指摘を受けていない指定商品・指定役務とに出願を分割することで、指摘を受けていない指定商品・指定役務については登録査定がなされます。

【日本の不使用取消審判の制度・実務との比較】

日本の不使用取消審判の制度・実務と比較したとき、中国と台湾は・・・

(1)中国
駆け込み使用に関する規定がないので、不使用取消審判の請求は、商標権者と交渉・接触する前が原則!
不使用取消審判を請求した者は、審理に関与することができない!
拒絶査定不服審判と並行して不使用取消審判を請求する場合は、再出願とセットで!

(2)台湾
不使用取消審判を請求する際は、不使用の事実を証明する証拠を添付しなければならない!
商標権者が答弁書・証拠を提出した場合は、審理が長期化すると考えた方が良い!

簡単ではありますが、中国と台湾の不使用取消審判の制度・実務のご紹介と、日本の不使用取消審判との比較は以上です。

弊所は、中国・台湾をはじめとする外国への商標登録出願や外国での審判事件など、外国商標案件を数多く手掛けています。

外国への展開やそれに伴う商標戦略については、石原国際特許事務所までお気軽にお問い合わせください。

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